キミと生きた時間【完】
「バッグ取り返してくれてありがとな。それとこれ、さっきの礼。返さなくていいから。じゃあな」
バッグの中から取り出した黒い折り畳み傘をあたしに押し付けて、早口でまくしあげるようにしゃべりさっさと背中を向けて歩き出す宇宙君。
もう、行っちゃうの……?
そそくさとこの場から逃げ出そうとする彼の態度に何故か興味が湧き上がる。
あたしは借してもらった折り畳み傘を開くと、急いで彼の背中を追いかけた。
「……――んー……、このあたりに家なんてあったかなぁ」
おもわずポツリと呟いて、辺りをキョロキョロと見渡す。
彼の背中を追いかけて早20分。
予想通りお天気雨だったのか、いつの間にか雨も上がり、空には虹がかかっていた。