キミと生きた時間【完】
絶望の中、スッと頭上から手のひらが伸びてきた。
「……――保健室いくよ」
その手は、あたしの腕をギュッと掴む。
そして、そのまま力を込めてあたしの体を気遣うように立ち上がらせた。
「は?なに、荒木。アンタ、あたしにはむかう気?」
荒木さんはあたしと美奈子の間に割り込むように体を挟み込んだ。
まるで、あたしをかばうように。
「別にそういうんじゃない」
「じゃあ、何なのよ!?アンタ、里桜がなにしたか知ってんの?かばうなら荒木、アンタも同じ目に……――」
「勝手にすればいいんじゃない?」
苛立って声を荒げる美奈子に荒木さんは表情一つ変えずにサラッとそう言い放つ。
「あのさ、一つだけ教えてあげる。いじめって犯罪なの。さっき浅野さんにバッグ投げつけたでしょ?鼻血まで出ちゃったし、アンタ、何の罪になるのかな?」
「は、ハァ?何それ……」
「浅野さんをかばうと、あたしまで同じ目にって……どういうこと?ハッキリ言ってよ」
「何なのよ!超ウザい!!」
「自分の立場が悪くなると、言い返すこともできないんだ?」
「だから、うるさいって言ってんでしょ!?」
「そうやって、大声あげればいいと思ってるのかもしれないけど、みんな、実は心の中でドン引きしてるから」
「……――ハァ!?」
顔を真っ赤にして怒りをあらわにする美奈子を鼻でフンッと笑うと、荒木さんはあたしの手を引いて教室を後にした。