キミと生きた時間【完】
「あたしがいじめられるようになってからその子へのいじめはなくなったの。ホッとしたし、その子が一緒にいてくれればいじめにだって立ち向かっていけるって信じてた。だけど、その子は一緒にいてくれなかった。それどころか、先陣を切ってあたしをいじめた」
いじめのターゲットが荒木さんに変わったことで、彼女は再び自分がいじめられないように計算を働かせたのかもしれない。
数日前まで自分をいじめていたボスに取り入って、自分の居場所を作った。
仲の良い友達だと思っていた彼女の裏切り行為に荒木さんは失望した。
「いじめたもの勝ちっておかしいでしょ?自分だけがよければそれでいいなんて絶対におかしい」
「そうだね」
「だけど、その子に卒業式の日に言われたの」
『正義感振るのもいいけど、うまく立ち回らないと自分が損するよ?』
「確かにそうかもしれないけど、みんながみんな自分の損得勘定で生きていけるわけないじゃん。自分勝手に生きる人と我慢をする人がいて、自分勝手に生きる人が得をするなんておかしいよ」
顔を歪めて必死に言葉を続ける荒木さんの震える手をあたしはそっと掴んだ。