紫陽花たちの相合傘
紫陽花たちの相合傘




「はああああ……」



普段なら軽音部のボーカルが練習している放課後の学校のベランダ。

私は『紫帆(しほ)』と自分の名前の書かれた傘を手すりに引っ掛けたまま、ため息を吐いた。

中学生になる前に買ったせいで名前は少しかすれていた。



梅雨のせいで雨が続き、なんだか空気がじめじめしている。

背中まである髪をひとつにまとめてはいるけど、湿気を含んでどうしようもないことに。



サックスのシャツにえんじ色のリボンタイ。

グレーに薄いピンクのラインが入っているスカート。

規定通りの膝丈が煩わしい。



自分自身を冷静に見つめると、一言で言って垢抜けない。






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