紫陽花たちの相合傘
クラスではひっそりとしている彼を私が知っていたのは、印象的な名前。
私と同じアジサイを連想させる名前。
「んー……同じクラスの……誰だっけ」
うんうん唸っているなーと思っていれば、名前がわからなかっただなんて。
「もうすぐ高校生になって三ヶ月だよ?
紫藤陽生(しどうはるき)くん」
少し脱力しながら声をかけると紫藤くんは「へぇ、知ってたんだ」と目を丸くした。
「で、そっちの名前は?」
「あ、花野紫帆(はなのしほ)です。
母がアジサイを好きだから紫帆なの」
どうもどうもとお辞儀をすると、「あ、ご丁寧に」と返される。
冷静に考えると異様な光景。