紫陽花たちの相合傘
「紫藤くんはどうしてここに?」
「あー、傘を忘れて」
なるほど、と納得しかけて……あれ?
「持ってないよね」
紫藤くんの荷物はリュックひとつとスッキリしている。
「なんかなくなってた」
「え、ええー⁈」
それはパクられているんじゃ……。
冷静すぎる紫藤くんと対極に、私は挙動不審になっている。
「それで?」
早くしろと言わんばかりの目を向けてくるけど……言葉足らずにも程がある。
私の頭の中でひとり疑問符が飛び交う。