紫陽花たちの相合傘




「お前は何で泣いてたんだよ」

「っ──!」



気づいてたんだ、と口の中で呟く。

ちらりと紫藤くんの方を見ると、興味深々という訳でもなさそう。



ふぅ、とため息を吐いた。



視線を校門に戻すと……ウソ、まだいる。

どうやら彼女が鞄の中をぶちまけているみたい。



雨で道は濡れているのに、ご愁傷様。



「……あの桜色の傘を持っている人いるでしょ」



指差すと、紫藤くんが近寄って来て、ベランダと廊下という距離は一気に詰まり、肩を並べる。



視線の先がきちんと合っているのを確認した。



「荷物を落とした彼女を手伝ってる男ねぇ。
あれ、前の彼氏なの」






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