恋結び ~キミのいる世界に生まれて~
そして、曇った窓ガラスに誰かが書いた落書きを手のひらで消した。
…翔平と莉子の相合傘を……
「…ホントだ……」
咄嗟に声の調子を合わせたけど、表情を作るのは間に合わなかった。
ぎこちないのがバレないように、なんとなく莉子の視界から逃れた。
クラスの誰かが冷やかしで書いたんだろうけど。
自分でもごまかせない胸の痛みを感じる。
こんなの、笑ってすまさなくちゃいけないのに……。
あの昼休みのおかげで、2人が付き合っているという空言は、事実としてほぼ全校生徒にまで及んた。