恋結び ~キミのいる世界に生まれて~
理人がポケットから何かを取り出した。
「旅行のスーツケースをしまいに、倉庫に行ったんだ……」
「倉庫…」
口にして、その存在を久々に思い出した。
『倉庫には魔物が住んでるから絶対に入るなよ』
小さいころからあたし達に決して立ち入らせなかった教会の裏手にある古びた倉庫。
脅すようなお父さんの口調から、子供ながらにそれは本当に怖い場所なのだと感じ、あたし達は言いつけ通り寄りつくこともなかった。
もう高校生になったあたし達がそんな迷信を信じるはずも、倉庫が怖い理由も何もないけれど。
そもそも倉庫の存在なんて忘れていた。