恋結び ~キミのいる世界に生まれて~

「美桜、もうメシできるよ」


少しだけ擦れた気持ちに、ふいに降りかかる声。


そこには、リビングから顔だけをのぞかせている翔平がいた。


「…うん。手洗ってくる」


意識して口角をあげ、そのまま洗面所に直行したあたしは鏡を覗き込んだ。



翔平に話しかけられるとドキッとする。


瞳が見れない。


決意は固いくせに、正直言って気持ちはまだ追いつけないあたしがいる。



……全然だめだよね……。




ほらまた。


鏡の中の自分がぼやけてく。




でもせめて


翔平の前では





あたしはうまく笑えてる――…?


ちゃんと、兄妹に戻れてる――…?

< 383 / 615 >

この作品をシェア

pagetop