恋結び ~キミのいる世界に生まれて~

翔平の手が、あたしから離れる。


今度は翔平が葵ちゃんの前にしゃがみ、その顔を覗き込んだ。


「美桜もね……うらやましいって言ってたよ」


「えっ…?」


それに反応した葵ちゃんと同様。


……あたしなにか言ったっけ…?


翔平は何を言うんだろうと、息をのむ。


「お母さんがキミにお弁当を届ける姿を見て、あれが本当の親子なんだな…って。

昨日の美桜は……それを見てちょっとだけ嫉妬したんだ」



……翔平っ…!?


それはっ――


気配を察知したのか、翔平は一度あたしを見上げた。


そして、"大丈夫だよ…"っていうように軽くうなずく。
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