恋結び ~キミのいる世界に生まれて~

「…ありがとう」


「…いえ」


ふっ…と、温もりが離れる。


「昨日の……」


あたしはそのまま自然な形で口を滑らせた。


「えっ……?」


「あたしの隣にいた、男の人……」


「…ああ、あの背の高い…」


分かるわ…というように頷く母。


「…教会の前に置かれていた赤ちゃん……覚えてますか…?」


――賭け、だった。


「…っ、」


一瞬動きが止まったように見えた母の目が、すぐ見開かれた。


「もちろん…覚えてるわっ」


「あの時の赤ちゃんが……彼なんです……」
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