恋結び ~キミのいる世界に生まれて~
一刻も早くここから逃げ出したいと願ったあたしの手は、
「待てよ」
翔平の脇をすり抜けようとすると再び掴まれた。
「……っ」
その瞬間、堪えていたはずの涙が一粒落ちた。
なんで、引き留めるの。
受け入れてもらえないなら。
お願いだから今すぐこの手を離してよっ…。
「……」
引き留めたくせに何を言うでもない翔平。
その気配を背後で感じるだけ。
やがて。
スッ…とその手は解かれ。
「……っ」
今度こそここに留まる意味を無くしたあたしは、俯いたまま教室を飛び出した。