305号室の男。【完】
病院に運ばれる中、大智さんの呼吸は苦しそうだった。



「………くっ」



そう…、あの時と同じ。



しゃくりあげるあたしに。



「な…、お…。泣くな…」



スッと右手が伸びてきて親指で、あたしの目元を拭った。



「だって…、大智さんが…、死んじゃ…、う…」



次から次へと、涙が溢れ言葉にならない。



「奈緒…。俺は…、死なねぇよ…。心配すんな…」



弱々しく笑った大智さん。
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