305号室の男。【完】
「でもっ……!!」



尚も泣くあたしに。



「俺は…、詠二のように…。お前を…、置いてなんかいかねぇよ…」



「……っ。大智さんっ…。あたし…、あたしね」



今、思ってること…、大智さんに対する気持ちを伝えたい…。



大智さんの右手を握った。



「あたし…。大智さんが好き、だよ」



詠二のことは、忘れられない。



だけどそれは好き…、じゃなくて好きだった…、に変わっていることに気付いたんだ。



一瞬、目を大きく開いた大智さん。



「奈緒…。ぜってぇ、死なねぇから」



そんなこと言われたら死ねるわけねぇだろ、と笑ってくれた。



「うん…。絶対、死なないで…。あたしの傍に、いて…?」



「あぁ、約束するよ…」



そう言って、大智さんは意識を失った。
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