305号室の男。【完】
「じゃぁ、俺行くわ」



ベッドに座ってた雅が立ち上がった。



「雅」



大智さんが雅を呼び止めた。



「んー?」



雅が振り返ると。



「悪い…、桜のこと頼むな」



そう言った大智さんの顔は、哀しそうだった。



「あぁ、任せておけって」



“じゃぁ奈緒ちゃんまたね?”と、あたしの頭に軽くポンと手を置くと、雅は部屋から出て行った。



2人残された、静かな部屋。



「大智さん…」



あたしは声をかけた。
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