305号室の男。【完】
「奈緒さん!!いいんですか!?」



「別に関係ないし」



「ほんとっ、最低!!」



葵がこう言ってくれるだけで、それだけで良かった。



「ホント悪ぃ…」



申し訳なさそうな顔の大智とその隣で勝ち誇ったように奈緒を見る女。



あたしの勘だけど、あの女に何か言われたんじゃないか…そう思った。



いや、ただ大智さんの心変わりかもしれないけど。



「もういいですから。送ってきたらどうですか?」



「あー、奈緒?」



「何でしょう」



「携帯番号教えてくれねぇか?」



「イヤです」



「……」



とてもじゃないけど教える気になれなかった…。
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