305号室の男。【完】
詠二は眠ったようにピクリとも動かなかった。



「詠二…嘘でしょ…?」



あたしは、ゆっくりと詠二に近付き、さっきまで笑っていた詠二の顔に触れた。



「ねぇ、死んじゃったの…?喋ってよ…。笑ってよ…。奈緒って呼んでよ!!えいじーっ!!」



それでも詠二は動かない。



喋ってもくれない。



救急隊の人が来て詠二が担架に乗せられる。



「ご家族の方ですか?」



その言葉に



「…はい」



そう返事をしていた。



「では、ご一緒に来ていただけますか」
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