305号室の男。【完】
「それは違うわ」



「違わない!!」



「奈緒ちゃん…。そんなこと言わないで?詠二は奈緒ちゃんと会うの、いつも楽しそうにしてたの。お空で詠二が泣いてるわよ?」



「……っ」



お姉さんの方がツライのに、あたしが慰められてどうするんだろうか…。



その時…。



「では、ご遺族の皆様。故人との最後のお別れです」



係りの人が淡々と話す。



詠二のお父さん、お母さん、お姉さん、親戚の方々が次々と詠二に最後の別れをしていた。



「奈緒ちゃん」



お姉さんに手招きをされ近付いた。



「詠二…っ」
< 89 / 196 >

この作品をシェア

pagetop