305号室の男。【完】
「話してくれてありがとう。もう、顔上げて…」



そう、あたしが言うと



「許して…、くれんのか…?」



大智さんは戸惑いの表情を見せた。



「うん…。だって大智さんがその嘘をついたから今のあたしたちがいるんでしょ?だったら怒ることなんかないよ?」



あの嘘がなかったらあたしはまだ詠二のことで苦しんでたと思う。



今もやっぱり忘れられないけど大智さんに会って少しずつ前に進んでると思う。



「奈緒…、ありがとう」



優しく微笑むその顔に引き込まれたあたし。



「行くんでしょ…?」



「ん?」



「詠二の、お墓に…」
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