ハムスターランド(信州シリーズ2)

降格

○同、玄関、内、夜
   泥酔の秀夫。
英子「まあ、どうしたの?」
晶子「お父ちゃん!」

   ハムリンが晶子の手の中から飛び出る。
秀夫「仕事に失敗した。左遷だ」
   秀夫、崩れ落ちる。

   ハムリンが秀夫の手の近くに行く。
   秀夫、ハムリンに手を伸ばす。
   ハムリン、キッと声を上げ、
   秀夫の指を噛み首筋へ駆け上がる。

秀夫「いたっ、かまれた!」
英子「まあ、晶子!ハムリンを早く捕まえて」

   晶子、ハムリンをそっと捕まえ奥へ。
   英子、しゃがみ込んだ秀夫の上着を脱がせながら、
英子「大丈夫よ、くびになったわけじゃないんでしょ?」

秀夫「ああ、くびじゃないが、今度のプロジェクト、ごっ
   そり出し抜かれた。部下の蓮尾がチーフに抜擢。
   俺は降格だ。このままじゃとても耐え切れない」

   秀夫、がっくりと肩を落とす。

   x x x

○会社、調査室、外
   調査室斉藤と書いてある。

○同、内
   斉藤秀夫が窓際に座っている。
   ノックの音。
秀夫「どうぞ」

   ドアを開けて美人の山上陽子がお茶を運んでくる。
陽子「このたび調査室と資料室の担当になりました、
   山上陽子です。よろしくお願いします」

秀夫「そう。資料室の山本さんは来年定年だったよな」
陽子「お呼びになれば御茶やコピーのお手伝いを
   するようにといわれています」

秀夫「分かりました。山下新総務に、ありがとう
   ございますと伝えといてください」
陽子「かしこまりました」
   陽子、礼をして出て行く。

秀夫「山下と蓮尾とは同期のはずだ。完全に、
   後輩に出し抜かれた」
   秀夫、じっと窓の外を見る。

   電話が鳴る。
   受話器を取る秀夫。
交換の声「山菱商事の田中様からお電話ですが繋ぎますか?」

秀夫「山菱の田中か、早耳だな。ああつないでくれ」
田中(電話の声)「斉藤元気か?お前のこと聞いたぞ。
   出世頭だったのになあ。とにかく話し聞かせろよ」
秀夫「ああ、わかった」
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