逆行男子
一 東京
とにかくスゴい人だ。東京に来たのは中学の修学旅行以来だった。駅のホームに降りた時の感じは、修学旅行の時のワクワク感とは違っていた。
駅は独特の匂いがして気分が悪くなった。久しぶりにこんなたくさんの人混みを歩いたからかもしれない。僕は駅の外のベンチに腰掛け、周りを行き交う人をじっと眺めていた。
もう人混みに混じるのも嫌になり、タクシーでアパートへ向かう事にした。
タクシーの中はタバコ臭くて、これはこれで気分が悪くなった。
アパートが見えてきた。決して綺麗とは言えないが、僕みたいな始めて東京で暮らす学生にはきっとちょうど良いんだろう。
部屋に着き、僕はすぐフローリングに横になった。自然と涙が流れてきた。新幹線の中であれだけ泣いたのに、なぜだろう。涙が止まらなかった。
日が暮れてきたからか余計悲しくなり、泣き止むどころかさらに声を出して泣いた。
泣きながら自分でも情けなく思い、ようやく涙を拭いた。コンビニで買った弁当を温め、バカみたいにムキになって、口いっぱいに詰め込んだ。