パッセージ
「何だ、お前か」
聞こえた声に反応する。
「奏汰?奏汰も出かけるの?」
「…まあ」
少し歯切れの悪い返事。
でも、奏汰が曖昧に頷くのはいつものことだからあまり気にならない。
それよりも、どこに行くのか気になる。
誰と行くんだろう?
もしかして、昨日一緒だった涼川さんとかな?
「奏汰もデート?」
思いのほか、自分の声が頼りなく震えてしまった。
「は?」
奏汰は気づいてない様子で、驚いた様に私を見た。