オアシス・カフェ〜三人のプリンス〜

あれから俺は笑わなくなった。

母さんに似た人を見ると涙が溢れてきて。

いつしかその涙も枯れ果てた。


中学に入学すると、急激にモテるようになった。

特に年上から言い寄られることが多くて、中1の夏、付き合ってもない先輩と初めて体を重ねた。

行為の最中は、何とも言えない快感と人肌の温かさに満たされた。

だけど、行為が終わるとすぐに空虚感でいっぱいになって…

俺はそれを誤魔化すように色んな女を抱くようになった。

誰でも良かったんだ…


高校に進学すると、俺はカフェでバイトを始めた。

母さんが生きてた頃、毎朝珈琲の香りが家のダイニングに漂っていて。

俺が起きると、その香りの中、母さんが『おはよう、蒼』と微笑む。

俺はそんな朝の時間が凄く大好きだった。

だからカフェのバイトの募集を見つけた時、迷いもなく受話器を取っていた。


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