オアシス・カフェ〜三人のプリンス〜

「ーー…蒼‼︎」


柚姫ちゃんと別れ家に帰ると、傷だらけの俺を見た父さんが声を上げた。


「どうしたんだ⁉︎その怪我‼︎」

「別に何でもーー…」

「ーー…何でもなくないだろ⁉︎顔から血を流してるのに。救急箱持ってくるから待ってなさい」


そう言って、「救急箱何処だっけ…」とリビングを探し回る父さん。

そんなに騒がなくたって、これぐらいの怪我なんでもないのに。

今までの精神的な痛みに比べたら数倍マシだし。



「ったく、俺はもうガキじゃねぇんだぞ…」


強制的にソファに座らされ、半ば呆れ気味に小言を漏らす。


「何言ってるんだ。父さんから見たら、蒼はいつまで経っても子供だよ。大事な大事な俺の自慢の息子だ」

「……っ…ふん…」


柔らかい微笑みを浮かべて、真剣にそんなことを言うもんだから、照れて思わず目を逸らしてしまった。

自慢の息子…か。

父さんは、最近俺がバイトをサボってどれだけ皆に迷惑を掛けているのか知らない。

女を取っ替え引っ替えにして、挙句それが今回の喧嘩の原因になったことも。

それを知ってたら自慢なんて言えねぇよな…



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