オアシス・カフェ〜三人のプリンス〜

「良いことでもあったのか?」

「…特に何もないけど。何で?」


良いことと言ったら、ついさっきあったばかり。

好きな女が出来たこと、だけど恥ずかしくてそんなこと父さんには言えないから黙っておく。


「いい顔してるから」

「いい顔って、傷だらけで帰って来たのにか?」

「ああ。何ていうかな、清々しいっていうか…前みたいに思い詰めた感じはしない」

「…俺、思い詰めた顔してた?」

「してたなぁ。塞ぎ込んで、殻に閉じこもって。どうしたもんかとずっと考えてたけど、思春期のお前に何を言っても通じなかった。そもそも、家で顔合わせなかったしなぁ」


寂しそうに、ふっと口元に笑みを浮かべた父さん。

目尻に皺を寄せ白髪が混じった頭を見ると、歳を取ったなぁって思う。


「明日、何の日か覚えてるか?」


明日?カレンダーを見ると、18日に赤い丸が書かれている。

ああ、そうか。

明日は俺の誕生日で、母さんの命日だ。




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