オアシス・カフェ〜三人のプリンス〜
一学期最終日。
今日は終業式だけで、お昼は凛子とファミレスに来ていた。
「で?何があったの?」
「何って?」
「朝からずっとボーッとしてる。蒼君とやっと仲直りして元気になったと思ったのに」
ハンバーグにかかったデミグラスソースが、鉄板の上でグツグツ音を立てる。
湯気に乗って鼻を掠めるその香りは、普段なら食欲をそそるのに、今日はなかなか箸が進まない。
昨日の夕飯も、今朝の朝食も。
ほとんど喉を通らなかった。
「遣都さん、プロポーズするんだって…」
「え…?」
「昨日、相談されちゃった。こんなサプライズは喜ぶかな?って」
凛子は驚いた表情を見せると、「そう…」とだけ言って箸を止めた。
暫しの沈黙。
ガヤガヤと騒がしい店内の全ての音も、今の私には遠くに聞こえる。
「…告白しないの?」
「あんな幸せそうな遣都さん見てたら告白なんて出来ないよ…」