オアシス・カフェ〜三人のプリンス〜
「…行くぞ」
そう言って、歩き出す卓人さん。
「お前、遣都さんにも誰にも言うなよ」
「もしかして…知ってたんですか?遣都さんと澤村さんのこと」
卓人さんはてっきり二人のこと知らないと思ってたけど、知ってたんだ…
澤村さんは卓人さんの元カノで、今は遣都さんの婚約者ってことかな…
でも、それじゃさっきの男性は?
もしかして…浮気?
そんな…だって、遣都さんのプロポーズを泣いて喜んだんでしょ?
二人はもうすぐ結婚するんだよね?
なのにどうして他の男性とそんな楽しそうに歩いてるの…?
卓人さんはそれから険しい顔のまま、何も話さなかった。
そして、その日の夕方。
「あら、遣都。いらっしゃい。休日なのに彼女とデートしないの?」
完全オフスタイルの遣都さんがいつものカウンター席に腰を掛ける。
カーキのカーゴパンツにポロシャツを着たラフな格好に、普段は掛けてない細いフレームの紺色の眼鏡。
髪はセットされてなく、少しだけ寝癖がついている。
いつもと違うその姿に、ドキドキしっぱなしの私。
もう失恋したも同然なのに…
ドキドキしたって意味ないのに…
胸の鼓動は私の心とは反対に、鳴り止む気配がない。