オアシス・カフェ〜三人のプリンス〜
え…?今…いいって言った⁇
冗談だよね?
だって、私は卓人さんが嫌いな“女”。
勉強教えるってことは、少しは近寄ったり話したりしないといけないんだよ?
「やる気が損なわれる前に、今日から始めたら?二人が上がる時間帯なら店も空いてるし、ここでやればいいじゃない」
「…平井は?それでいいか?」
「あ…は、はい…!」
ハルちゃんは「柚姫、良かったわね」と私の背中をぽんっと軽く叩いて、鼻歌を歌いながらキッチンに戻って行った。
良かったわね、じゃないよ…
勉強教えてもらえるのは凄く有難いことなんだけど。
私…緊張で、心臓おかしくなっちゃいそうだよ…
「じゃあ、これやってみて」
その日のバイト後、早速店でマンツーマンの勉強がスタートした。
2人がけのテーブルに向かい合って座る。
今日の卓人さんは、妙に色っぽい気がする…
いつもは掛けてない黒縁メガネ。
話す度に上下に動くくっきり浮き出た喉仏。
紫のチェックシャツの下に黒のタンクトップを着ていて、たまに鎖骨のラインがちらっと見える。
そして極めつけは…
「ん?」
低くて、だけど優しいその声に私の心臓は破裂寸前だった。