オアシス・カフェ〜三人のプリンス〜
「ーー…っ…ちょっと来い‼︎」
卓人さんは泣き喚く私の腕を掴むと、ビルとビルの間ーー、
人がギリギリ二人並んで歩けるぐらいの路地に引っ張って行った。
背中にざらりとしたビルの壁が当たる。
路地には当然灯りはなく、メインストリートから入る些細な光でぼんやりと辺りが見える程度。
雑音が遠くに感じる。
さっきまで滝のように流れていた涙は、ピタッと止まっていた。
目の前には、息をのむほど綺麗な顔。
それは少し手を伸ばせば届くぐらい近くて、お互いの呼吸が聞こえるほど。
卓人さんは私の顔の横に手を着いて、漆黒の瞳で私をジッと見つめてくる。
何…?
何でこんな態勢になってるの?
「落ち着いた?」
「…は、はい……」
必死に頭の中で今の状況を整理する。
私ったら…あんな人通りが多いところで、子供みたいに泣き喚いて…
「嫌いにならないで」だなんて恥ずかしいこと言って…
さっきまでのことを思い出した途端、一気に顔が熱くなった。