オアシス・カフェ〜三人のプリンス〜
「遣都、いらっしゃい」
ハルちゃんの声に、顔を上げると、遣都さんが店に入ってくる所だった。
ノーネクタイに薄い水色の半袖シャツ。
クールビズと呼ばれる格好も、遣都さんによく似合っている。
涼しげで、いつもの倍爽やかに見えた。
「卓人君が勉強教えてるんだって?」
いつものカウンター席に荷物を置いて、私達のテーブルに来た遣都さん。
「はい。卓人さん、凄い教え方上手なんですよ」
「へぇ。流石だな〜!俺にも見せて」
数学の教科書を渡すと、遣都さんはパラパラっとページをめくる。
「うわ!高校生ってこんな難しかったっけ?俺、もう全然わかんねぇや」
「何言ってんの。遣都は卓人が通ってる大学出身なのよ」
そう言うと、ハルちゃんは「いつものでいいかしら?」と遣都さんの席におしぼりを置いた。
「遣都さんもK大出身なんですか?」
「俺なんて運がよくて受かっただけだし、卓人君は法学部だろ?レベルが違い過ぎる」
法学部って弁護士とか検察官とかになりたい人が通う学科だよね?
遣都さんもそうだけど、卓人さんって本当に頭が良いんだ。