オアシス・カフェ〜三人のプリンス〜

遣都さんはポケットから財布を取り出すと、お札をカウンターに置いた。

そして、入り口で立ち尽くす澤村さんの横を、彼女に目を向けることなく、スッと通り過ぎる。

「あ…」と声を発して姿を追う澤村さんの目の前で、ドアはバタンッと音を立てて閉まった。


一瞬だけ見えた遣都さんの横顔は、怒りや憎しみよりも、悲痛に満ちていて…

胸がギュッと苦しい…


「ーー…遣都さんっ!」


私は思わず、勢い良く椅子から立ち上がった。

遣都さんを追いかけようと、足を一歩踏み出そうとした時、眉間に皺を寄せた卓人さんが視界に入る。


そうだ、今は卓人さんと勉強中。

私のためにわざわざ時間作ってくれてるのに、ここでいなくなるわけにいかない。

だけど、あんなにも辛そうな遣都さん…

放っておけないよ…


「…卓人さん……あの…」

「行けば?」

「え…?」

「行けよ。遣都さんのこと放っておけねぇんだろ?早くしないと見失うぞ」


そう言って、卓人さんはまだボーッと立ち尽くしている澤村さんに視線をやった。


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