オアシス・カフェ〜三人のプリンス〜
◇遣都side

ーーーー間もなく、当ゴンドラは頂上に到着致します。


ゴンドラ内に、機械的なアナウンスが流れる。

五分袖のテーラードジャケットのポケットに手を入れて、ある物の存在を再確認した。

心臓の音が、ゴンドラ内に響いてしまうんじゃないかと心配になるぐらい、激しく音を立てる。

俺はゴンドラが頂上に達したら、最愛の女性にプロポーズをしようと心に決めていた。


「うわぁ…素敵…」


その相手ーー、
澤村穂花はそんな俺の計画なんて知らずに、東京の夜景に釘付けになっている。


「ねぇ、遣都!見て!ホントに綺麗よ」


そう言って、振り返った穂花は屈託のない笑顔で、心の底から愛しいと思う。


「ああ…綺麗だ…」

「もう!見もしないで適当なこと言って。ちゃんと見てったら」

「見てるよ。夜景よりも、俺は穂花の方が綺麗だと思う」


歯が浮くような台詞。

こんな恥ずかしいこと、普段は言わないのに。

今日は特別な日だからなのか、そんなこともスラスラと口から出てくる。



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