オアシス・カフェ〜三人のプリンス〜
二人の間に流れる空気は穏やかだった。
女嫌いで有名な卓人君が、まさか女の子相手に微笑むなんて。
当然、周りの女性客からも嫉妬の眼差しが向けられている。
当人達は気付いてなさそうだけど…
「いらっしゃいませ。二名様ですか?」
他のスタッフが接客してる声が後ろから聞こえる。
柚姫ちゃんと卓人君は、職業病とでも言うんだろうか。
ドアの開く音とスタッフの声に即座に反応し、目を見張った。
「二人ともどうした?」
すぐに強張った表情に変わった柚姫ちゃんと、眉間に深い皺を寄せる卓人君。
二人の異変に、何故だかわからないけど、妙な胸騒ぎがして…
「遣都さーー…」
慌てて俺を制止する柚姫ちゃんを無視して振り返った。
「ーー…穂花⁈」
俺は驚きのあまり、言葉を失った。
視線の先には、最愛の女性…穂花が別の男と手を繋いで寄り添っていた。