オアシス・カフェ〜三人のプリンス〜
「遣都…なんで、ここに…?」
穂花は俺に気付くと、繋いだ手をパッと勢いよく離し、男から一歩距離を置く。
「…お前、今日…会社の同期と女子会だって…」
何だよ、これは…
俺は悪い夢でも見てんか…?
それとも、あのプロポーズの方が夢だったのか…?
男は何が起こってるのか把握出来ていないようで、穂花を怪訝な表情で見つめている。
「……あ、あのね…これは、その…」
目を泳がせ、必死で言葉を探してる様子の穂花は、さりげなく左手を隠すように右手で握り締めた。
出来ることなら気付きたくなかった…
穂花の左薬指に、俺が嵌めた婚約指輪がないこと。
それを、穂花は多分無意識に隠そうとした。
俺は拳を握った。
小刻みに震えるほど強く…
この込み上げてくるものが怒りなのか、それとも悲しみなのか…
そしてそれが穂花に対してのものなのか、はたまた穂花にそうさせてしまった自分に対してのものなのか…
今の俺にはよくわからない。
だけど、今はこの場を離れたい。
じゃないと俺は、穂花に酷い事を言ってしまいそうだから。