オアシス・カフェ〜三人のプリンス〜
◇募る想い

あの後、私と遣都さんはしばらく夜空を眺めていた。

遣都さんは私の肩に頭を乗せたままで、時折吹く風が遣都さんの柔らかい髪を靡かせて私の頬をくすぐった。

どれぐらいそうしていただろうか。

すぐ近くを救急車が通り、遣都さんは頭を上げた。


「そろそろ、帰ろうか」


そう言って、ふわっと微笑んだ遣都さんはやっぱりどこか元気がなくて、胸がズキッと痛んだ。

遣都さんとメインストリートで別れ、一人で店に続く路地を歩く。

「ありがとう」と言って、雑踏に飲まれて行く遣都さんの後ろ姿が頭から離れない。

少しでも早く、遣都さんのえくぼを刻んだ笑顔が戻りますように…

その背中に、そう願うことしか出来なかった。


路地を抜け広場に出ると、店の脇にある自動販売機の前で男女が抱き合っているのが見えた。

男性は背中を向けているし、女性は顔を男性の胸に埋めているので、誰なのかわからない。



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