オアシス・カフェ〜三人のプリンス〜

うわぁ…ドラマみたい…

付き合ったことがない私は、抱き合うなんて未知の世界。

生でそんな姿を見たことだってないし、あるのはテレビの中だけだし。

邪魔しないように、見ないようにしても、そういうことに憧れを抱く年頃。

ちらっともう一度二人に目をやった、その時…


「ーー…えっ…あれって……」


同時に身体を離した二人を見て、驚きのあまり息を飲んだ。

自動販売機の明かりではっきりと見えた男性の服装、髪型、背丈…

そして女性の横顔。


「卓人、さん…と穂花さん?」


それは紛れもない二人の姿で、私はその場に足を止めた。

胸にドクンッと鈍器で叩かれたような痛みが走り、身体が震えてくる。

どうして…

なんで抱き合っているの…?

やっぱり卓人さんは穂花さんのこと、好きなの?


私が立ち尽くしていると、ふいに穂花さんと目が合った。

微かに穂花さんは口の端を上げ、私から目を逸らす。


やだ…やだよ……

卓人さんが他の女性を抱きしめてるところなんて、見たくない…


私は来た道を全速力で走った。

胸が苦しい…

苦しくて、痛くて…辛い…



< 173 / 251 >

この作品をシェア

pagetop