オアシス・カフェ〜三人のプリンス〜
うわぁ…ドラマみたい…
付き合ったことがない私は、抱き合うなんて未知の世界。
生でそんな姿を見たことだってないし、あるのはテレビの中だけだし。
邪魔しないように、見ないようにしても、そういうことに憧れを抱く年頃。
ちらっともう一度二人に目をやった、その時…
「ーー…えっ…あれって……」
同時に身体を離した二人を見て、驚きのあまり息を飲んだ。
自動販売機の明かりではっきりと見えた男性の服装、髪型、背丈…
そして女性の横顔。
「卓人、さん…と穂花さん?」
それは紛れもない二人の姿で、私はその場に足を止めた。
胸にドクンッと鈍器で叩かれたような痛みが走り、身体が震えてくる。
どうして…
なんで抱き合っているの…?
やっぱり卓人さんは穂花さんのこと、好きなの?
私が立ち尽くしていると、ふいに穂花さんと目が合った。
微かに穂花さんは口の端を上げ、私から目を逸らす。
やだ…やだよ……
卓人さんが他の女性を抱きしめてるところなんて、見たくない…
私は来た道を全速力で走った。
胸が苦しい…
苦しくて、痛くて…辛い…