オアシス・カフェ〜三人のプリンス〜
「あら、起きてたの?」
そう言って、部屋のドアを開けたお母さんは「ここ置いておくわね」と私の鞄を机に置いた。
「あれ?その鞄…」
それは今日、持ち歩いていた教科書が入った鞄で、遣都さんを追いかけた時に店に忘れてきた物だった。
「今、バイトの子が持ってきてくれたのよ」
「え⁉︎誰⁉︎名前聞いた?」
「槙村君よ。今度、お礼言っておきなさい」
お母さんは一度私の頭を撫でると、そのまま部屋を出て行った。
ベッドから出ると、鞄をぎゅっと胸で抱き締める。
卓人さんが触れた鞄。
そう思うと、すごく大切なものに感じる。
ふと夜風にあたりたくなって、カバンを抱き締めながらカーテンを開けて窓の鍵に手を掛けた。
「ーー…えっ…」
ドキドキと加速する心臓。
家の前には、携帯を片手にうちを見ている卓人さんがいた。
咄嗟にカーテンに隠れ、鞄を更に強く抱き締める。
その時、枕元に置いた携帯がバイブ音を鳴らした。