オアシス・カフェ〜三人のプリンス〜
しばらく水道で冷やした後、スタッフルームで卓人さんが薬を塗ってくれた。
静まり返ったスタッフルームに、私の鼓動が響きそうで、必死に卓人さんを意識しないように努めた。
「ありがとうございました」
「…別に」
「片付けは私がしますので、卓人さんは先に戻ってください」
処置が終わると、私は救急箱の蓋を閉めた。
なるべく目を合わせないように、早く二人っきりの気まずい空間から出るために、黙々と片付けを進めていく。
その間、卓人さんの視線をビシビシと感じるも、気づかない振りを続けた。
「よっと……あれ…」
救急箱を元の位置に戻そうと、棚の一番上に手を伸ばす。
だけど、背伸びしてもなかなか届かない。
すると、頭上から卓人さんの手がスッと伸びてきて、後ろから救急箱を棚に戻してくれた。
「すみません。ありがとうござ……っ…」
振り返ると、真後ろに立ったままの卓人さん。
思わぬ近さと、瞬きせずに見つめてくる漆黒の瞳に、心臓が大きく跳ね上がった。
「た、卓人さん…?」
「……」
震えそうな声を必死に抑え、呼びかけるも、卓人さんは眉一つ動かさない。