オアシス・カフェ〜三人のプリンス〜
え……?
一瞬、卓人さんが何を言ったのか理解出来なかった。
誰が…好き…?
私が好きなのは…
好きで好きでたまらないのは……
震える唇を開きかけた、その時。
「柚姫ちゃん‼︎」
買い出しで出かけていた蒼君が慌ててスタッフルームに飛び込んできて、私達は蒼君がドアを開けるほんの数秒前に咄嗟に離れた。
「…蒼君おかえり」
心臓がドキドキしてる…
これが、蒼君に見られたかもしれないという焦りからなのか、卓人さんの思わぬ行動のせいなのかわからないけど。
蒼君に怪しまれないように、必死に冷静さを保つ。
「火傷したって聞いたけど、大丈夫⁉︎」
そう言って、蒼君は心配そうに眉を寄せた。
さっきのこと全く気付いた様子のない蒼君に、ほっと胸を撫で下ろす。
「うん…大丈夫だよ。卓人さんに応急処置してもらったし」
「ほらね」とガーゼが貼られた手を見せると、蒼君は「あー…ホント良かった」と息を吐いた。
その間、ずっと棚に寄り掛かっていた卓人さんは、何も言わずにスタッフルームから出て行った。
「あ…卓人さん…」
ちらっと見えた卓人さんは、いつものクールな感じではなく、険しい表情をしていた。
卓人さんが出て行ったドアを見ると寂しさと、切なさが身体中に広がる。
卓人さんの気持ちが、わからない…
卓人さんが好きなのは穂花さんなんでしょう?
なのに、なんでキスしようとするの…?
どうして、そんなこと聞くの?
…私の心を掻き乱すの…?