オアシス・カフェ〜三人のプリンス〜
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遣都さんが店に来なくなってから、数週間後の土曜日。
やっと店が空いてきて、ハルちゃんとカウンター内で息をついていると、ゆっくりとドアが開いた。
「遣都さん!」
「こんにちは、柚姫ちゃん」
そう言った笑顔が、心なしか弱々しく見える。
そして何よりも、少し痩せた遣都さんに胸が痛んだ。
「遣都、あなたちゃんと食べてるの?」
ハルちゃんは泣きそうになりながら遣都さんに駆け寄った。
「ハルさん、心配かけてごめん…穂花とは婚約解消したんだ。ちゃんと話し合って…円満に別れたから」
「そう…」
「もうそんな顔しないで。ほら、俺元気だし。久しぶりにハルさんの珈琲が飲みたくてさ。あと、とびっきり甘いパンケーキ、お願いできる? 」
無理矢理目を細めて微笑む遣都さん。
そんなすぐに、心の傷が癒えるわけない。
きっと今だって、辛くて辛くて仕方ないはず。
だって、遣都さんは本当に穂花さんのこと、大切に想ってたから…
「もちろん、すぐ準備するわね」
ハルちゃんは涙を拭うと、キッチンへ入って行った。