オアシス・カフェ〜三人のプリンス〜

遣都さんはいつものカウンター席に座り、私がおしぼりを渡すと、「ありがとう」と受け取った。

遣都さんの触れる指先が冷たい。

その手を暖めてあげられたら良かったのに…


「…ねぇ、柚姫ちゃん。バイトの後、時間ある?」

「え?ありますけど…」

「デートしよう」


ーーーーーーーーーーーーー・・・・


「きゃあ!」

「よくボール見て。目を逸らさないで」


18時にバイトが終わり、そのまま遣都さんの車に乗ってご飯を食べ、バッティングセンターへ向かった。


バンッ‼︎

「きゃあ!当たった!遣都さん!当たりましたよ!」

「うん!凄いね!ほら、次来るよ」


人生初のバッティングセンターに、大はしゃぎな私。

遣都さんに教えてもらいながら、徐々に当たるようになってきた。

遣都さんは、というと…


カキーン‼︎

「凄い、すごーい‼︎遣都さん、百発百中ですね」


一球目から空振りなく、全て快音を鳴らしていた。

バッティングセンターにいる間、遣都さんのいつもの笑顔が見れて、ホッとした。

少しでも、一瞬でも、辛いことを忘れられたらいいと思う。

じゃないと、遣都さんが壊れちゃうから…




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