オアシス・カフェ〜三人のプリンス〜

「あの二人、半年前から付き合ってたらしい。俺 、全然気付かなくてさ」

「そう、なんですか…」

「…そうさせてたのは俺。交際期間は長いのに、なかなかプロポーズされなくて、寂しかったんだって言われたよ。穂花は結婚願望が強かったから」


遣都さんは膝に肘をついて、手をギュッと握っている。


「苦労かけたくなくて、仕事がんばって…ある程度の収入を得られるようになったらって思ってたんだけどな…」


何を言っていいかわからなくて、ただ夜景を見つめた。

あの光の中には、笑ったり泣いたり怒ったり、たくさんの人が働いて生活してる。

私はなんてちっぽけなんだろう…

切なさがじわっと胸に染みて、涙が目に滲む。


遣都さんは、何を思ってこの夜景を眺めているのかな…

穂花さんとの未来のために、仕事を精一杯頑張ってきた遣都さん。

その気持ち、穂花さんには伝わらなかったんだろうか。

“結婚”

私には遠くて、未知の世界で、どんなに考えてもピンと来ないけど。

結婚はもちろんしたい、だけど一緒にいられればそれでいいと思うのは、私がまだ高校生だからなのかな…




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