オアシス・カフェ〜三人のプリンス〜
私に何が出来るかな…
遣都さんのえくぼを刻んだ飛びっきりの笑顔を見るために私はどうすればいいんだろう。
「…そろそろ帰ろうか」
遣都さんは、ふぅっと息を吐いて立ち上がった。
本当に、私は無力だ…
「…柚姫ちゃん?」
「…っ…うっ…」
座ったまま、スゥッと涙が頬を伝う。
「ごめんなさい…私…気の利いたこと…言えなーー…」
私が言い終わる前に、ふわっとシトラスの香りと、温もりに包まれた。
遣都さんは地面に膝をついて、座ったままの私を優しく抱きしめる。
「いいんだ…いいんだよ…」
「遣都さん…」
「話を聞いてもらえるだけで、俺は十分救われてる。あの日も、何も言わずそばにいてくれて…心があったまったよ」
「うゔ…」
「ありがとう、俺のために泣いてくれて…」
吐息と、掠れた声が鼓膜を震わせて、心臓が早鐘を打つ。
遣都さんはこんな時でも優しくて…
「柚姫ちゃんは優しいね……好きになっちゃいそうだよ…」
砂糖のように甘い。
遣都さんは私の肩に顔を埋めた。
頬にあたる柔らかい髪、微かに震える大きな背中、震える吐息。
私は大きくて、だけど弱々しい遣都さんをそっと抱きしめた。