オアシス・カフェ〜三人のプリンス〜
「それにしても、助かったわ!柚姫が残ってくれて」
ハルちゃんは鼻歌を歌いながら、洗った珈琲カップを拭いている。
この街には大学が二つあって、店の客の大半は大学生。
大学の夏休みは長くて9月いっぱい。
私は夏休み期間の助っ人として雇われていたから、大学生の夏休みが終わる9月末までの約束だった。
だけど、ハルちゃんにも並木さんにも残ってと言われていたし、ここが大好きな私は親に頼み込んで、成績を落とさない条件でバイトの許可をもらった。
二学期始まってすぐの学力テストの成績が良かったのと、ハルちゃんも一緒に頼んでくれたおかげ。
「それにしても、最近やたらと男性客が多いのはやっぱり柚姫ちゃん効果かな?」
並木さんが客席をぐるっと見渡しながら言った。
「へ?私ですか?」
「そう!それが唯一の気がかりなの!この通り、この子に自覚はないし」
「自覚って?何の?」
ハルちゃんと並木さんが、「やっぱり…」と苦笑いを浮かべている。
私がいると男性客が増えるって、どういうことだろう?
それに自覚って?
うーん…考えても考えてもわからない…
「すみません!」
「はい、お伺い致します」
お客さんから声が掛かり、カウンターを出る。
「これは本物の天然だな」と並木さんが呟いたのも知らずに。