オアシス・カフェ〜三人のプリンス〜
◇失恋
ある日のバイト帰り。
「あ…澤村さん…」
店を出ると、自動販売機の前に、いつものように清楚な女性らしい格好の澤村さんが立っていた。
卓人さんでも待ってるのかな…
そういえば、今日の卓人さんの格好は、ジャケットを羽織っていつもよりもお洒落だった気がする。
二人の関係を想像して、胸がズキッと痛む。
澤村さんに軽く会釈をして、早足で前を通り過ぎようとすると、「待って」と不機嫌そうな声で呼び止められた。
「ちょっと話があるんだけどいい?」
え…私に話?
何だろう…遣都さんのこと?
それとも卓人さんのこと?
チラッと澤村さんを見ると、目の下には隈が出来、心なしか少し痩せたようで、思わず目を見張った。
私は素直に頷くと、歩き出した澤村さんの後をついて行った。
メインストリート沿いにあるチェーン店のカフェは、仕事帰りのOLやカップル、大学生でほぼ満席だった。
2人がけのテーブルに座ると、澤村さんは煙草に火をつけた。
「あ…灰皿…」
「大丈夫。これあるから」
そう言って、携帯灰皿をテーブルに置いた。