オアシス・カフェ〜三人のプリンス〜
「煙草、吸うんですね」
「ふっ。意外?」
「…はい。正直」
「…でしょうね。煙草を吸ってるのは遣都も知らないわ」
遣都さんも知らない?
婚約者だったのにどうして?
「意味がわからない?そうね、高校生にはわからないかもね。大人になると、色々あるのよ。あなたも大人になったらわかるわよ」
フゥと吐き出した煙が、ユラユラと天井に舞い上がっていく。
「この前、あなたも店にいたのね」
“この前”とは多分、遣都さんと鉢合わせた時のことだと思う。
「あ…はい…」
「ざまあみろって思ってる?」
「そんな!思ってません…」
「ふ…いい子ちゃんなのね」
短くなった煙草を携帯灰皿に入れると、澤村さんは珈琲を口に運んだ。
その一連の動作が、私には凄く大人に見える。
「もう聞いたかもしれないけど、遣都とは婚約解消したの。一緒にいた男とも別れたわ」
「えっ…」
婚約を解消したのは聞いてた。
だけど、一緒にいた人とも別れてたのは知らなかった。
それはやっぱり、卓人さんと付き合う事になったからなのかな…?