オアシス・カフェ〜三人のプリンス〜
店を出て、トボトボと真っ暗な住宅地を歩く。
蒼君は何も話そうとしない。
その優しさが、胸に染みる。
「ねぇ、蒼君…恋ってさ、辛いね…」
「……」
「好きなだけなのに、どうしてこんなに苦しいんだろう…」
ふと、澤村さんの言葉を思い出す。
“卓人は私のそばにいてくれるって言ったわ。私を一人にしないって、抱きしめてくれたのよ”
卓人さんが澤村さんを好きなら、本当に私は卓人さんを諦めなければいけない。
だって、私の想いは卓人さんにとって、邪魔でしかないんだから…
スゥッと一筋の涙が頬を伝う。
あ〜あ…遣都さんの時と同じ。
私…また告白する前に失恋しちゃったんだ。
その時、後ろから温もりに包まれた。
細くて、だけど私とは違う。
硬くて、しっかりしていて、だけど優しい力…
「俺なら、辛い想いさせない」
ドキッと胸が跳ね上がる。
蒼君は私の肩に顔を埋めた。
「俺にしときなよ。俺なら柚姫ちゃんを泣かせたりしない」