オアシス・カフェ〜三人のプリンス〜
◇卓人side
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「どういうことだよ、穂花‼︎」
遣都さんと平井が店を出て行った後、男は意味がわからないと言わんばかりに声を上げた。
ハルさんは涙を流しつつも騒ぐ男を宥め、並木さんは他の数人のお客さんに頭を下げて回っている。
「あの男、何なんだよ⁈」
きっとこの男は、まさか自分が浮気相手だなんて少しも思ってないんだろうな。
哀れで可哀想な男。
数年前の誰かを見てるようで、少しイラっとする…
最初っから、もっと相手をよく見てれば二股なんて気付けただろ?
気付けずに今までのほほんと付き合って来たのは、お前も悪い。
「えっと…その…」
穂花は目に涙を浮かべて、あたふたしている。
あの涙は本物なのか、偽物なのか…
周りから見れば本物に見えるかもしれないけど、俺からはそうは見えない。
「あ、あの人はねーー…」
「婚約者だろ?」
「…っ…卓人…」
俺の存在にやっと気付いたのか、穂花は目を見開いた。
男は眉間に皺を寄せて俺を睨みつけてくる。