オアシス・カフェ〜三人のプリンス〜
「…婚約者?」
「そう、あなたは…まぁ、浮気相手ってとこですかね」
「浮気相手…だと⁈穂花、こいつが言ってることは本当のことか⁈」
男は今にも手が出そうなぐらい、怒り狂い、額の血管が浮き出ている。
「…ゔ……ひっく…」
穂花はとうとう涙を流し、小さくて華奢な身体を小刻みに震わせていた。
「本当のことかって聞いてんだよ⁉︎」
シーンと静まり返る店内。
穂花のか細い声だけが響く。
「ごめ…ごめんな、さい…」
男は右手を思いっきり振り上げた。
その手が勢い良く振り下ろされる瞬間、俺はパシッとその手を掴んだ。
「おい、離せよ」
男はドスの効いた声で、俺を威嚇する。
「その辺にしたらどうですか?どんな状況でも、女を殴るのは最低の行為ですよ。それにこんな女、殴る価値もない。あなたの手を汚す必要なんてありません。それでも殴るというなら、警察を呼びます」